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理想というまやかし
第2章 憂いの皇子

 石鹸の香りが仄かに混じった、未沙が本来内包している彼女の匂いが、りとに染み通ってくる。動物的な女の匂いは、きっとどんな花より淫らだ。

 唇を吸い上げるキスをして、歯列を舌先にくすぐって、唇の端を溢れる唾液を受けとめる。

 たぷんと露出した乳房の先端を指先に挟んでこねくると、未沙から切なげな悲鳴が上がった。
 脇腹を撫でてへそを囲うような呼び水を施す。りとが未沙のどこに触れてもどこに撫でても、彼女は肉体のどこかをひくひく顫わせて、甘い声をいっそう高める。


「あんっ……あん……っ」

「ここ、良いの?」

「んっ……」

「ここは?」

「やっ、あぁっ……良いのぉぉ……っ」

「いやらしい身体。……知ってたけどね。ここも、もういつもの未沙さんになってるかな」

「あっ、そのっ、……」


 りとがショーツを中指で押すと、火照った湿り気が帯びていた。布越しに恥丘をくすぐって、少し下がったところの突起を探り当ててこりっと押すと、未沙の下半身がびくんと波打った。


「やぁぁっ……」

「せっかくお洒落な下着、こんなにしちゃって。もったいないなぁ」

「あっ、りとが、そんな触るから……っ、ああんっ……」

「未沙さんから脱いだんだろう?こんな誘うような身体してるから、いけないんだ」

「んんぅっ!」


 心臓に近い方の乳首のまるみを口に含んで、歯を立てる。甘噛みのまま舌でつつくと、未沙が腰を左右に揺らした。とっくに呼吸を落ち着かせるのを断念している彼女は、りとがもう一方の乳房にも同じ愛撫を施しながらショーツの布を割れ目に押しつけると、いつも壁を突き抜けてくるあの悲鳴を上げた。
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