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理想というまやかし
第1章 孤独の女神
女を売る店、男を売る店。どちらにも属しない性を売る店。
いかがわしく見えて、蓋を開ければそうでもない営業形態の飲食店は、実は本当にいかがわしい店の並びに紛れ込んでいたりする。
周りの店のほとんどがまだ営業を始めていない明るい時間、真麻の勤務する男装居酒屋は、制服姿の女の子の客達も含めてほぼ満席だ。昼間はカフェとして営業しているため、義務教育中のませた少女達が安全な非日常を求めるにしても敷居が低い。
見目麗しい女の子達が、本物の男なんかより確実に格好良い佇まいでフロアを立ち回る中、真麻は注文表に従って、紅茶やスイーツを用意する。
男装居酒屋勤務と言っても、ロリィタファッションが大好きで、髪は物心ついた頃からロングヘア、目は出来る限り大きく描いて、化粧にピンクは常識だという理念を十年以上通してきた真麻に、もちろんキャストは務まらない。愛乃に連れられてきた時、紅茶やスイーツのラインナップにひと目惚れしたのと、キッチン業務の従業員はもれなくフリルのたくさんついたメイド服が接客なしで着用出来るという待遇を聞きつけて、大学卒業と同時にここで働くことに決めたのだ。
「真麻ちゃん、休憩行って」
「はい」
少しだけ入った裏ペチコートの膨らみを抑えてキッチンを抜け出すと、バッグルームでエプロンを外す。時刻は三時を回ったばかりで、今日の業務は残すところ三時間。
スマートフォンのLINEを開くと、愛乃からメッセージが入っていた。