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理想というまやかし
第2章 憂いの皇子
* * * * * * *
「DVD借りてきたんだ。この女優さん、とてもエロいと思わない?一緒に観たいな」
梅雨が明けて、澄み渡るような碧天が灼熱の日差しを降らせる頃、未沙が見るからにいかがわしい円盤を見せてきた。
りとが未沙と都合さえ合えば部屋を行き来するようになって、まもなくのことだ。
いつものように夕飯をとってお茶をして、中高生の親友同士よろしく身体を触り合ったりキスしたりしていた時、不意に彼女が出したDVDは、健全だった空気の流れを僅かに変えた。
肌色の面積は、たかが知れている。それでいて肉体美を武器としているような二人の女が身体をもつれさせているジャケット写真は、肝の据わった人間でなければ、他の客の目もあるレンタル専門店でレジへ持って行くまでが至難の業だ。それをここ数日内に未沙が実行したのだと思うと、りとはDVDの中身を観るより淫らな気分に誘われる。
「これを返しに行く時の未沙さんのあとを尾けた方が、ムラムラしそう」
「りとって、たまに感覚が男だね。まぁ観てみよう。女同士って、私は管轄外だったし。勉強のためにも、勇気出して借りてきたんだし」
「お姫様は皇子がリードしますから」
「っ、……。だって」
「こういうのって、男が観て悦ぶように作られてるじゃん。本人達にとっても、ただの仕事。子供が観て興奮するヒーローアニメに、大人が興奮する?」
「その理屈を出されると……、ふぁっ!」