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理想というまやかし
第2章 憂いの皇子


 未沙でさえあの加虐趣味の男よりりとを選んだのに、真麻は、愛乃のどこに執心するのか。愛乃は男でないにしても、相変わらず真麻のスケジュールのすみずみまで管理して、怪我を負わせた前科もある。

 彼女らを繋いでいる感情がどんなかたちか、第三者のりとに理解出来ないのは当然としても、誰でも良かったと話したいつかの真麻が、りとの胸にしこりを残す。


「お疲れ様です」

「お疲れ様ー」

「りと、お疲れ様っ」


 時計は四時を示していた。

 メイドカチューシャを外しながらりとに振り向いてきた真麻の笑顔に、目が眩む。

 真麻との朗らかな関係が、このままずっと続けば良い。このままずっと続かせるには、彼女の思う理想の友人を演じ続けるべきなのだろう。






第2章 憂いの皇子─完─
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