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理想というまやかし
第3章 嘆きの娼婦
「いつ一緒に暮らせるんだろう、私達。三芳は貯金進んでる?」
「お父さんの生活が楽になったくらい。ウチはお母さんも出て行ってるから。家賃と光熱費と返済で終わる」
「だよね。ウチも、親は二人いるけど、遊び代に吸われていってる」
昼休み、近くのコンビニのパンを囓りながら、愛乃と三芳は近況を話し合っていた。
一緒に出かけてやるくらいでは、男達は洋服や交通費くらいしか提供しない。上乗せされた交通費からスマートフォンの月額と雑費を引けば、あとは何も残らなかった。コピー取りの給料は、親の通帳に振り込まれるようになっている。
しかし二人には家族になる他にも夢があった。
幼さゆえの勇気はまだ衰えることのなかった二人は、ある日、会社の飲み会で隣に座った仲良し二人組の上司達に打ち明けてみた。
「えっ、愛乃ちゃん達、歌手目指してるの?」
「若いもんねー!やりなよ。俺、行くよ!」
「そうそう。オーディションは狭き門でも、ライブハウスから始めてみたら?チケット捌けばやらせてくれるとこあるし、紹介するよ」
「そういうの好きな知り合いいるし、ちょっとは教えてあげられる。チケットは俺達も協力するからさ」
大人は真面目で臆病。それは、愛乃のように未熟な少女達の先入観だったのかも知れない。