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理想というまやかし
第3章 嘆きの娼婦


 話数が進むにつれて、実名の少女達の絡みは過激さを増す。

 合間にジャケット写真の撮影があって、三話を終えた頃には日が沈んでいた。

 シャワーを浴びて化粧を直して、数時間の内に三日分のセックスを演じた愛乃は、きっと現実なら快楽で息絶えていた。しかし漫画のような筋書きは、適度に愛乃を興ざめさせた。


 現場が映像チェックに入ると、愛乃と三芳は小休憩のため、どうせまた脱ぎ捨てる衣装を適当に羽織って、空き部屋へ移った。


「あと四話……。本当、こんなことになって──」

「もう言わない約束。下手に逃げて、あとで追って来られたりする方が面倒だし」

「うん」

「愛乃は、よく頑張ったよ。私の方こそごめん。気づけなくて」

「三芳以外の人と、繋がりたくなんかなかったの。知られたくなかった」

「ありがと」


 赤くなってるね、と、三芳が愛乃の腕を持ち上げた。僅かに変色した肌の部分に、まるで自分の持ち物を労るような調子の彼女の唇が触れる。

 宙吊りにした愛乃の裸体に低温蝋燭で模様を描いて鞭で落とすという三話の前戯は、それだけの加虐を演じさせられた三芳の方が泣きそうだった。
 交際を始めた親友同士の一方が、男性教師の個人授業で媚びた態度を見せたために、仕置きが始まる──。
 あの筋書きも、やはり事実に重ならなかった。実際の愛乃は誤解を招く仕草どころか、本当に不貞を働いていた。そして実際の三芳は、嫉妬で愛乃を虐げたりしない。


「ね、三芳」

「何?」

「私のこと、嫌いになっても良いからね。三芳に嫌われて、私が死んでも、絶対呪ったりしないから」


 三芳を失えば、愛乃は生きていける自信がない。

 しかし彼女に見限られても、それは愛乃の自業自得だ。
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