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理想というまやかし
第3章 嘆きの娼婦
「部長。株式会社◯◯の、田中様からお電話です」
「有り難う」
初めは受話器の受け渡しの際、愛乃の手が、偶然部長の手に触れただけかと思った。
しかしオフィスの男達の目は、気がつくと愛乃を舐め回していた。ライブハウスで向けられてくる類の、爽やかな好意を伴うのとは違う。男達は、愛乃自身には関心を示していない。彼らの目は、尻を物色している。タイトなスカートが強調する太ももの線や、そこから続くふくらはぎ、振り向きざまに突き出す乳房の膨らみを、こそこそもせず検分している。
ある時、コピーをとっていた愛乃の脚を、古株の社員の手が触れた。愛乃のか細い悲鳴も耳に入らなかった様子で彼は、掴んだ太ももを撫でさすって揉みしだく。
「良い顔するねぇ。色っぽいねぇ」
「やめて、下さ……」
「観たよ、『素人美女がスペルマ風呂でご奉仕耐久24時』」
頭が真っ白になった。そのタイトルは、愛乃の二度目の出演作だ。
硬直する愛乃の身体を触り回して、古株は安心しろと言葉を続ける。他の社員も知っている、遠慮しないで鳴けば良い、と。
三芳はよその部署まで用事で出ていた。