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理想というまやかし
第4章 哀傷の姫
「友達なんて、私は思ったことないよ」
甘く掠れた低めの声が、艶を帯びる。歌劇か何かにでも見るような美しい皇子を彷彿する、セレナーデでも歌い出しそうに切なげな声は、思いつめた目許をいつにも増して謎めかせる。
「真麻のこと、友達としてなんか見れないよ」
「からかわ、ないで……。っ、ふ…っ」
りとの指が、真麻のおとがいを持ち上げた。
顎から頬へ移る指先の優しさにくらくらする。膝と膝とが触れ合って、唇が距離をなくしていく。
中性的な、それでいて真麻の知るボーイッシュ系の女の子達の中で言えば可愛い類に入る顔立ちを直視出来なくなって、目蓋を下ろす。呼吸を止めたのとほぼ同時、覚えのある感触が唇を塞いだ。
キスはすぐ離れていった。
りとが真麻のこめかみから流れる髪を耳にかけて、髪をとかして首筋を撫でる。
「からかって、友達を恋人から奪いたいなんて考えるわけないだろ」
「困る……」
「ちゃんと考えてくれないと、本当に襲っちゃうよ」