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理想というまやかし
第4章 哀傷の姫
* * * * * * *
日本人は、ノーと言えない。
国民性のせいにするしかないのは、このままでは本当に、真麻は母親と血が争えなくなるからだ。
貴女なら構わない、怖くないから。
そんな風に、胸の奥では何度も叫びを上げていた。有り難迷惑な友人を、口先では無碍にして、真麻は見透かして欲しかった。
まるで日常の外側まで抜け出してきて、りとと間違いなく距離を縮めて、二度目のキスを交わした時、真麻の脚と脚の間はいよいよどうしようもなく湿っていた。
りととの距離をなくすほど、触れるほど、彼女が真麻を辱めてきた男達とは違うのが分かる。
彼らは、こんなにも真麻の心に触れたがろうとしなかった。真麻の言葉を欲しがらなかった。胸に頬をうずめれば、柔らかで優しい、りとの思い遣り深い匂いがする。
愛乃とは違う唇が、真麻のそれに被さってきて、じゃれつくようにして啄んだ。上唇を吸い上げてきたりとが、上下の歯列の間に舌を進み入れてきて、真麻は合わせて舌を動かす。
りとの口内は甘くなかった。いくら彼女が甘党でも、今夜は真麻と地中海料理を食べていた。アメニティの歯磨き粉も同じものを使った分、二人、きっと同じ味がしているのだ。