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理想というまやかし
第4章 哀傷の姫
翌日は二人とも休みだった。
平日の街を散策しながら、真麻はどれだけ笑っただろう。友人とこれだけ長い時を過ごすのも、久し振りだ。
お母さんのいる家には帰れないの、というりとの問いに、真麻は首を横に振った。
母親とは仲が良かった。しかし真麻が愛乃との同棲を急いだのは生まれ育った家を一日も早く出たかったからだ。あの無邪気な母親が、今はどんな男と交際しているか知らないが、家には生臭い記憶がこびりついている。
「真麻は、もっと自惚れた方が良いよ。土足で踏み込むようなこと言って悪いけど、君には言いたい。お母さんは、真麻を苦しめるために恋人を連れてきてるんじゃないんだよ」
「うん。でも思い出すの。りとは、何で私が抵抗しなかったのかだとか、助けを呼べなかったのか、きっと不思議がるタイプだね。出来ないの。お母さんが傷つくから。それにあの人達が私に忠告してきたように、お母さんに嫌われたくない」
「恋人が娘に迫ったのを知って、嫉妬するって話……か。真麻さ、それこそ言いくるめられてるよ。もしそうなったら嫉妬するって、お母さん本人が言ってたの?」
「ううん」
「真麻を好きなようにしたくて、あいつらが巧いこと言ったんだ。それより、真麻が今、好きなように生きれてないことの方が、お母さんには問題なんじゃないかな」
「好きなように生きてるよ。そのために愛乃と暮らし始めたんだもん」