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理想というまやかし
第4章 哀傷の姫
「それでも、人生って一度きりじゃん。生まれ変わって人になれるかも分からないし。来世はないかも知れないし。その一度きりに、一番大事にするのが自分じゃないっておかしくない?」
「好きな人、を、大事にするのも幸せだよ」
「自分を愛せないようなヤツに、他人まで愛せない。よく言うじゃないか、自分がされて嬉しいことを相手にしろって。何が嬉しいか自分で知っていなくちゃ、してあげられることなんて限られてくると思う」
「…………」
「ねぇ真麻」
「ん?」
真麻は、りとの肩にもたれかかっていた。
木陰に肌寒さを感じたからだ。お節介で余計なお世話ばかりしてくる、少し顔が良いくらいで日常的に調子に乗る友人と、今だけくっついていたい。
りとが真麻の片手をとった。指と指の隙間に、りとのそれが挟まってくる。
鼓動がおかしくなりそうだ。この優しい指が、夜明け近くまで真麻を愛でて、貫いた。愛乃とも試したことのない体勢をとったり、甘い声を自覚していてわざとだろうという言葉責めに慄かされたり、りと曰く不真面目なセックスのあとは、とろけるようなキスを交わして、泣けるほど優しく蹂躙された。