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理想というまやかし
第4章 哀傷の姫


 永遠に繋がっていたかった。変わらないものが存在するなら、それこそ自分達であればと願う。


 死んでも何も生み出せない。愛乃を慕った想いも消える。

 分かっていて愛乃に殺されたくて、真麻も彼女を殺したい。どうせ変わっていくものなら、変わる前になくせば良い。


 汗ばんで、女特有の媚びた匂いにまみれた真麻は、愛乃から薬を受け取った。減りが早いと医者に叱られたことがあるらしい睡眠薬は、飲み尽くしても今後咎められる心配もないが、彼女のために半分残した。

 真麻の体液でファンデーションの崩れた愛乃に唇を寄せて、本当に最後のキスを施す。

 幸せの意味など分からなかった、しかし今が幸せだ、と話す愛乃を愛おしく思う。そして彼女の腕をとって、動脈の透けた部分に剃刀を立てる。

 細くて白くて柔らかい。

 積もりたての白雪を足跡で汚したがる人間に、甚だしく共感した。
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