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勇者の献上品である聖女は、魔王に奪われその身に愛をそそがれる
第3章 魔王③
(な、なに、これは……)

 ぬるっとした柔らかいものが、唇の隙間にねじ込まれようとしている。それ男の舌だと認識すると、鳥肌が立った。

 唇をきつく結び侵入を拒もうと抵抗したが、呼吸が苦しくなり、少し開いた隙間からの侵入を許してしまった。

 狭い口内を、決して入ることのないものが侵略し蹂躙していく。

 相手を追い出そうと舌で抵抗しても、逆に押し戻される。

 いや押し戻されるどころか、フィーネの舌に絡みつき、いやらしい水音が口内に響き渡った。相手の舌からもたらされる卑猥な音に、脳内まで犯されている錯覚すら覚える。

(やっ、こんなキス、知らない……)

 お前は黙って勇者を受け入れるだけでいい。

 そう言われ、男女の交わりに対し最小限の知識しか与えられなかった彼女には、今、自身に降りかかっている状態が理解できない。

 知識も逃れる術を持たないフィーネは、両目をきつく閉じ、相手の動きが止まるのをただ黙って耐えるしかなかった。
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