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勇者の献上品である聖女は、魔王に奪われその身に愛をそそがれる
第21章 疼き⑥
 自分はこれほど余裕がないのに、何故向こうはフィーネの反応を観察する余裕があるのか、不思議で堪らない。

 しかしそれは表面上だと、手から伝わる男の欲望が知らせて来る。

 フィーネが触らされてから、それはどんどんと硬さと熱さを増していたからだ。

 余裕そうに見える男が隠す興奮を知り、フィーネも気持ちの昂りを抑えられなくなった。

 道具だから、主に逆らえない。
 道具だから、自分の希望は伝えられない。

 人間たちから言われ続け、呪縛となっていた枷が解き放たれ、心の奥にある本心が顔を出した。

 可愛らしいおねだりが、唇から紡ぎ出される。

「ま、まおうさ……ま。おねがい……です……あ、あなたがほしい……」

「良く言えたな、フィーネ」
  
 そう言って優しい口づけが少し汗ばんだフィーネの頬に落ちた。

(魔王様のキス……いつも心が温かくなる……)
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