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勇者の献上品である聖女は、魔王に奪われその身に愛をそそがれる
第26章 大浴場①
 そのため、本来はこの大浴場にいるはずの世話係の姿はない。恥ずかしがるフィーネにアンジェラが配慮してくれたのだろう。

 その気遣いが、とても有り難い。

(こんなに大きなお風呂を、私一人で頂けるなんて……)

 申し訳ないと思いつつも、自然と表情に笑みが浮かぶ。
 今まで経験したことのない、華やかな花風呂に、ワクワクが止まらない。

「凄くいい香り……」

 浴槽からの香りを胸いっぱい吸い込んだその時、

「……フィーネ?」

「きゃっ!」

 湯が流れる岩の陰から聞こえた低い声に、フィーネは驚きで跳ね上がった。
 そのせいでかけ湯をしようと持っていた手桶を落とし、派手に音が鳴った。

 それを聞きつけ、大浴場の出入り口に人影が映る。フワフワな頭のシルエットを見ると、アンジェラだろう。
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