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勇者の献上品である聖女は、魔王に奪われその身に愛をそそがれる
第34章 女神と魔王③
「私がピアチェに力を返すことが出来れば、邪神ラファは倒され、この世界に再び平和が訪れるだろう。それまで耐え続けるしかない。人間たちの心はラファに掌握されているし、そもそも我々の言葉など聞く耳を持たないからな」

 長い時間、彼はずっと孤独に戦ってきた。
 魔族たちを、いや、世界を邪神から守るため、どれだけ孤独な戦いを強いられてきたのか。

 想像すると、胸が苦しくなった。
 その想いは、瞳から雫となって零れ落ちる。

 涙するフィーネ映す翠色の瞳が、大きく見開かれた。

「何故泣く?」

「……分かりません。あなた様がお一人でずっと戦い続けてきたと思うと……苦しくて悲しくて堪らなくなるのです」

 そう言ってフィーネは、魔王の身体を抱きしめた。

 彼女が流す涙が零れ落ち、触れ合う肌を濡らしていく。魔王の胸に顔を埋め、フィーネは肩を震わせた。
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