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勇者の献上品である聖女は、魔王に奪われその身に愛をそそがれる
第34章 女神と魔王③
 ピアチェの力を持っているなら、人間などたやすく滅ぼせるはずだ。

 しかし主はそれをしない。

 どれだけ悪の権化だと罵られても、滅ぼすべき存在だと言われても、何もせず、ただひたすら守りに徹し続けた。

 女神の帰還を信じて。

(優しい……この方は……本当に優しい……)

 そんな主に対し、自分に何が出来るのだろうか?

 黙って肩を震わせるフィーネの頭に、魔王の手が乗った。深紅の髪を撫でる手は、とても優しい。

「泣くなフィーネ。大したことではない。王として、民を守るのは当たり前だ」

「で……でも……」

「それなら……お前が私のそばにいて、支えてくれないか?」

 思わぬ言葉に、フィーネは顔を上げた。
 目の前には口元に笑みを湛え、こちらを見つめる魔王の姿があった。

 太い指先がフィーネの頬を伝い、目じりに溜まった涙を拭うと、すっと顔が近づいて来た。
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