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勇者の献上品である聖女は、魔王に奪われその身に愛をそそがれる
第38章 拒絶①
(私は、ソルの傍にいて、あの方を支えられるのなら……それで十分幸せ)

 そう思うと嬉しくてたまらなくなる。
 道具としての生き方ではない、自分の正直な気持ちから生まれた願望、というのも誇らしかった。

 この国でフィーネは、ようやく自由を知ることが出来たのだ。

 過去の自分を思い出すと、哀れになる。
 何故、あれほどまで心を殺して生きていけたのだろうと。

 そんなことを考えながら、離れの庭に咲いているピアチェの花を摘んでいる時、葉がさわさわ揺れる音が聞こえた。
 背の高い草が不自然に揺れている。

 緊張しながらも、フィーネは揺れる草陰に向かって震える声を掛けた。

「だ、誰かそこにいるの⁉」

「……うわぁっ‼」

 高い声と共に、草陰から赤毛の少年が飛び出してきた。どうやらフィーネの声に驚き、倒れてしまったらしい。

 不審者が子どもだと知り、フィーネは慌てて彼の傍に駆け寄った。
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