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勇者の献上品である聖女は、魔王に奪われその身に愛をそそがれる
第38章 拒絶①
 庭に、子どもたちの明るい声が響き渡る。

 しかし、何一つフィーネの耳には届いていなかった。

 頭の中が重りを詰め込まれたように重くなり、目の前の視界が薄く靄のかかったようにぼやけて、良く分からなくなる。
 血の流れがとまったかのように、手先や足先が冷えて感覚が感じられない。

 そんな身体の異常を見せるなか、ふと女神ピアチェがソルを庇って死んだことを思い出す。

 彼は、こう言っていた。

”ラファは受肉したピアチェを見つけると、近くにいた一人の魔族に攻撃した。ピアチェはその魔族を咄嗟に庇い……死んだ”

 恋人同士だったから、ピアチェのそばにソルがいた。
 近かったから、ピアチェはソルを庇うことが出来た。

 籠に入っている真っ赤な花が視界に入った。

 この庭のみに咲く、魔王が特別に作った花。

 女神の名を持つ――花。
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