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勇者の献上品である聖女は、魔王に奪われその身に愛をそそがれる
第39章 拒絶②
「フィーネ? まだ起きているか?」

 ノック音とともに、聞き慣れた低い声が寝室に響き渡った。
 
 全てを終え、休みにやってきたソルだ。

 いつもなら嬉しくて堪らなくなる瞬間だが、今日は苦しかった。

 重い気持ちを引きずりながら、フィーネは寝室のドアを開けた。そして彼に悟られないよう、いつもと同じように笑みを浮かべたつもりだった。

 しかし、暗雲たる気持ちを隠しとおせなかったようだ。迎え出たフィーネの表情を見た瞬間、ソルの表情が曇ったからだ。

「どうした? 顔色が優れないようだが……何かあったのか?」

 彼女の頬に触れながら、ソルが顔を近づけてくる。

 フィーネは慌ててうつむき、彼の手から逃れると、表情を見られないよう後ろを向いた。

 彼を見たくなかった。

 今、ソルと向き合えば、子どもたちの話が思い出され、醜い気持ちが溢れて止まらなくなってしまう。
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