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勇者の献上品である聖女は、魔王に奪われその身に愛をそそがれる
第40章 拒絶③
 まだソルに対して気持ちが残っていることを感じながら、フィーネはくいっと涙を手の甲で拭った。

 そして唇をきつく結ぶと、目指す方向を真っ直ぐに見つめた。

 この国にやってきてから、道具ではなく、一人の人間として生きることが出来るようになったと思っていた。心の強さを得たのだと思っていた。

(でもそれは……勘違いだった)

 何一つ、自分は変わってなかった。
 ただ、依存する相手が変わっただけだ。

 聖地にいた時は、聖女という自分の役目に。
 ディザニア国に来てからは、ソルに。

 それなのに愚かにも勘違いした自分は、女神に嫉妬し、ソルの手を払った。

 例え愛する人の身代わりであっても、その役目を受け入れ、差し伸べられた手を離さなければ、こんなことにならなかったのに。
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