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勇者の献上品である聖女は、魔王に奪われその身に愛をそそがれる
第40章 拒絶③
(役目を果たすことなんて……今までずっとやって来たことだったのに……)

 それなのに、何故ソルに対しては、耐えられなかったのだろう。
 身代わりでなく、自分自身を愛して欲しいと思ってしまったのだろう。

 そんな愚かな想いを、身の丈に合わない願いを、抱いてしまったのだろう。

 理由は分かっている。
 嫌という程。

(……愛してたから。本当に愛してた……から……)

 初めて誰かを愛した。
 同時に、嫉妬や独占欲などの醜い感情を知った。

 それらの感情に対する受け止め方を、フィーネは知らなかった。

 誰かに相談することも出来ず、自分の醜い感情を抑えることも出来ずに、振り回されるがままにソルを傷つけ、ソルに傷つけられることを恐れて逃げることしか出来なかったのだ。

(私が馬鹿だった……ソルと出会った時……あのまま捨て置いてくれれば……)

 愛する幸せと、愛する苦しみを知ることなく、心を殺したまま自死を選べたというのに。
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