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勇者の献上品である聖女は、魔王に奪われその身に愛をそそがれる
第44章 女神②
「申し訳ございません。ここまで話して頂いたのに、私がピアチェ様であったことも、あなた様とのことも、何も思い出せないのです。しかし……」

 脳裏に思い浮かぶのは、ディザニア国に来て感じた違和感。

 ソルは、フィーネが全てを、魂の繋がりさえも忘れてしまったと思っていた。
 だがそうではなかったと、違和感たちが告げている。

 失望に沈むソルに、フィーネは微笑みかけた。

「聖地から出たことのない私が、ディザニアの地で初めて目にした光景を懐かしく思う時がありました。それに、私はあなた様の名を知る前から、ソル、という言葉を知っていたのです」

 ソルが弾かれたように顔を上げる。表情には驚きと微かな希望が現れて見えた。

 そんな彼を真っ直ぐ見つめ返すと、微笑んだ。
 今まで抱いて来た疑問に、ようやく全ての回答が得られたからだ。
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