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勇者の献上品である聖女は、魔王に奪われその身に愛をそそがれる
第60章 再会④
 幻想的な光景ではあったが、それに心を奪われる余裕など、今のソルにはない。
 愛する人の存在を、すぐそこに感じていたからだ。

 期待を抱きつつ見守る中、フィーネの声が再び脳内に響き渡った。しかしその声色は、どこか焦った様子を見せている。

『嘘……そんな……』

「ど、どうした! 何かあったのか⁉︎」

『私、ラファとの戦いで肉体を捨ててしまったの。だからもう一度、受肉しようとしたのに、元の姿が……フィーネだった姿が思い出せない……わ、私、どうしたら……』

 フィーネの言葉が途切れた。
 ショックで、この後に続く言葉が出ないのだろう。

 声のこもり具合を聞くと、顔を両手で覆って泣きそうになっている姿が想像できた。

 肉体を捨てなければ勝てないギリギリの戦いだったと知り、ソルは唇をきつく結んだ。それほどの過酷な戦いを、彼女一人に課したことが、悔しくて堪らない。
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