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勇者の献上品である聖女は、魔王に奪われその身に愛をそそがれる
第60章 再会④
 記憶が戻らなくても、ラファによって魂の繋がりが奪われても、自分を愛してくれた彼女の姿を思い出す。

 あれから五年経った。
 だがソルにとっては、つい昨日のことのように思い出せる大切な記憶。

 その時、ソルの手を握り返す感触が手を覆った。

 光の中から、白く小さな手が現れていたのだ。その手を優しく引っ張ると、光の玉がどんどんと人間の肉体へと変化していく。

 細い腕に小さな肩。
 丸みを帯びた細い腰から伸びる両足や、豊かに膨らむ胸。

 目覚めるような艶やかな深紅の髪が波打ち、閉じられていた赤い瞳がゆっくりと見開かれる。

 記憶と何一つ違わない、愛する人の姿があった。

 小さくも桃色に色づく唇が笑みを形作り、優しくも軽やかな声色が響いた。先ほどのように脳内に響くものではなく、空気を伝い、鼓膜を震わせる。
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