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勇者の献上品である聖女は、魔王に奪われその身に愛をそそがれる
第69章 女神の名をもつ花
 ラファによる偽神託がなければ、人間もディザニア国を侵略することはなかったはず。そういう意味では、人間たちも被害者。

 度重なる戦いで傷つき疲弊したサテアナ国を立て直すのに、力を惜しまなかった。

 人間たちには、邪神ラファの存在を明かしている。今まで起った災厄は全て邪神のせいであり、魔族に何一つ非がないことも伝えた。
 
 だからと言って、千年以上前からある魔族への偏見を変えられるとは思っていない。

 しかし、

(いつか……いつか人間たちにも分かってもらえる日が来たら……フィーネだった私が、魔族やソルの優しさに救われたように……)

 そう願わずにはいられなかった。

 全てを終えて迎えたこの日。
 ディザニア国に新たな魔王妃が誕生した。

「さあ、皆が待っている。いこうか」

 ソルが手を差し伸べると、フィーネは口元を幸せで緩ませながら、その手を取った。
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