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勇者の献上品である聖女は、魔王に奪われその身に愛をそそがれる
第69章 女神の名をもつ花
 純白のドレスに身を包んだ彼女から目を反らせないまま、ソルが眩しそうに目を細める。

「……凄く……綺麗だ、フィーネ」

「ありがとう。とても嬉しいわ、ソル」

 彼が溢した素直な言葉に、フィーネは満面の笑みを浮かべて答えた。
 しばらく見つめ合っていた二人だったが、

「魔王様、魔王妃様の美しさに目を奪われるお気持ちは痛いほど分かりますが、皆が待っておりますよ」

 傍で控えていたアンジェラの言葉が、これからすべきことを思い出させた。

 再び視線を合わせ、ふふっと小さな笑い声をあげると、フィーネはソルに手を引かれながら、広いバルコニーを歩いていった。

 目下に広がる魔族たちの姿に、赤い瞳が見開かれる。

「すごい……こんなにたくさんの方が来てくださるなんて……」

 感激で声を震わせながら、バルコニーの下に集まった魔族たちを見回した。
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