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勇者の献上品である聖女は、魔王に奪われその身に愛をそそがれる
第69章 女神の名をもつ花
 アンジェラに至っては号泣し、別の魔族に背中を撫でられながら支えられている。

「フィーネ」

 これからを、そして死んでもなおともにいようと誓った愛する人の声が、鼓膜を震わせる。
 湧き上がる喜びと愛おしさに心を震わせながら、彼の名を呼ぶ。

「ソル」

 それ以上の言葉は必要ない。
 絡み合う視線が、幸せそうに緩む表情が、互いの気持ちを間違いなく伝えているから。

 ――愛している、と。

 二人は再び互いの指を絡めると、歓声をあげ続ける皆に手を振って答えた。


 ディザニアの地は、祝福の赤で彩られ、いつまでも喜びの声が響き渡っていた。
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