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勇者の献上品である聖女は、魔王に奪われその身に愛をそそがれる
第12章 忠誠②
「そうか。不快でなければいい。それに……笑いたければ素直に笑えばいい。お前が笑う顔がもっと見たい」

 そう口にする彼の表情は、優しかった。
 初めて出会った時の冷然たる表情とは違う柔らかく美しい笑みに、フィーネの心臓が跳ね上がり、頬の熱が上昇する。

 早鐘を打つように心音が早くなる。魔王に聞かれてしまうかもしれない、そう心配してしまうほどに、脈打つ音がフィーネの脳内に響き渡る。

 再び唇が重なった。
 しかし今度は、先ほどのような軽い密着ではない。

 柔らかく小さな唇を、魔王の舌が這う。

 更なる深い繋がりを求めるように、唇の隙間を探っている。それに気づき、フィーネはそっと唇を開くと、彼の舌を口内に誘った。

 迎え入れられた舌が、唾液と共にフィーネのものと絡み合った。口内が魔王の舌で満たされ、息苦しさから彼女の呼吸が上がる。
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