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はじめてのひと。
第5章 確かめ合う想い
手を重ねたまま彼は言った。


「俺も好き、です…」


…そっか、良かった…私だけじゃなかったぁ…



何も言うことも考えることも出来ずにただ岡野くんを見ていたーー


すると突然、岡野くんの声が聞こえてきた。

「…綾ちゃ〜ん…?お〜い?」

「え?…あ、えっと…」


その言葉で上の空から現実に引き戻されて気の抜けた返事をしてしまう。

「今、どっか行ってましたよ?全然反応なかったし。」


「あ…、そう、だった…かな?」


何かもう色々…恥ずかしいぃ…

目を合わせられなくて俯いた。


ーその時何かが近づく気配がしたと同時に口を覆っていた手を掴まれた。


びっくりして顔を上げたその瞬間ー

彼の唇が私の唇を掠めた…と思ったらカチッと歯が当たる感覚がした。

あれ?…い、今の…キス…だよね?


「………ぷぷっ、ごめん」


お互い顔を見合わせ笑ってしまった。


「…じゃあ…仕切り直し…ね?」


もう一度ゆっくり引き寄せられるようにお互いの距離が縮まる。


長い彼の睫毛に触れそうで静かに瞼を伏せると、ずっと重ねられていた右手に力が入る。



お互いの吐息がかかる…


重ねた唇が熱い。


すっと熱が離れたかと思うとまたすぐに柔らかな感触が唇に当たる…


ゆっくりと顔を離すと岡野くんと目があった。


…やっぱり恥ずかしい~!


「…何か、不思議な感じですね…」


「ほんとに、ね…でも千紘くん。」

「はい?」

「敬語はやめようね?」

「あ…はい。いやっ、うん。」

「ふふっ」

私が笑うとつられるように彼も笑ったー。


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