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はじめてのひと。
第6章 心と距離
お互いの唇が静かに離れる


私は一呼吸しようとした瞬間、角度を変えてきた彼に視界を遮られた。


熱くて柔らかい唇が今度は少し強く重ねられる。


熱い唇で私の下唇を捉えると、湿った舌がその唇をゆっくりとその形を確かめるようになぞった。

「…んっ…」

びっくりして声が出てしまった。

彼はもう一度、唇を重ねるとリップ音をたててゆっくりと離れていく。


「…びっくりした…?ごめんね…どうしても…あの、したくなって…」

そう告げた彼は照れているようだった。

「ううん、大丈夫…」

私も充分、恥ずかしい…

「とりあえず、荷物片付けるから適当に座っててね?」


「あ、….うん。」

そう言うと彼は手際良く荷物を片付け、お茶を出してくれた。

出されたお茶を一口飲んだ。


冷たいそれは熱くなりかけてた体に沁み渡るようだ。


…⁈


背後から何かに包まれて驚いて振り返ろうとすると耳元で千紘くんの声がした。


「やっぱり、もっとキス…したい…」


その言葉を聞いただけで全身の体温が一気に上がった気がした。
求められていることを感じられて心が浮き立つ。


千紘くんの正面に向き直り、彼の胸に顔を埋める。

「私も…したい…」

彼の速い鼓動が聞こえる…


少し彼の身体を引き寄せ、唇を近づける。


すると彼は男らしい腕で私を抱き、啄むように優しく何度も唇を重ねる。




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