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華夏の煌き~麗しき男装の乙女軍師~
第39章 39 殺意
 ここ12年で春衣は使用人頭となり、十分な評価と報酬と信頼を得ている。つまらない男にすがってでも生きるしかできなかった母親とは、まるで別の生き方だった。自立したいと願っていたのは嘘ではないが、慶明の愛を得たいのも事実だ。

「まさか、星羅さんを晶鈴さまの身代わりにする気じゃ……」

 女教師である絹枝が、私物の書籍を見せるべく、勉強熱心な星羅をここに招き始めて数か月になる。忙しい慶明はすぐに星羅と顔を合わせることはなかったが、一度合わせると、うまい具合に都合を合わせ星羅が来ると屋敷に帰っていたりする。時には絹枝と星羅に交じって書物について話し合っていることもある。

「慶明さまの目つきが尋常ではなかった……」

 熱く燃えるようなまなざしを、少女に向けているのだ。自分に対しても、もちろん絹枝に対してもそのような視線を送っているところを見たことがない。絹枝はそういう男女の機微に疎いのか、慶明の星羅に対する熱視線に気づかないようだ。

「学問だけの女だもの」

 家事も、使用人に対する采配も絹枝は不得意のようで、今ではこの陸家を取り仕切っているのは春衣であるともいえる。
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