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華夏の煌き~麗しき男装の乙女軍師~
第58章 58 隊商
「えーっと、孜然(クミン)、宇金(ターメリック)、香菜(コリアンダー)、小豆く(カルダモン)、それとその三色の胡椒と唐辛子をもらおうかな。あ、それも! 」
「こんなに香辛料が好きな漢民族もなかなかいないね」
白いターバンを頭に巻いた商人の男は白い歯を見せて笑う。
「ああ、昔、辺境で咖哩飯(カレーライス)を食べてからはまってしまって」
「そりゃあいい」
スパイスを麻袋に詰め終り、商人が星羅に手渡したとき「おや?」と一瞬手を止めた。
「ん? 何か? 金が足りないか?」
「いや、兄さんによく似た女の人を西国で見たことがあってね。まあでも漢民族はみな同じ顔だしなあ」
その話を聞いたとき、星羅も京湖も、胡晶鈴のことを話しているのだと思った。平静を装い星羅は尋ねる。
「僕によく似た女性かあ。その人はなぜ西国に? 今はどうしてるんだろうか?」
「さあー。なんでだろうなあ。だけどもう昔のことだけど、確か別の隊商ともっと西の浪漫国に行ったよ」
「浪漫国……」
「どうかしたかい?」
「あ、いや。えっと岩塩はどこだったかな?」
「塩なら、反対側に売ってるよ。まいどあり」
これ以上深く追及しても何もわからないだろうし、京湖の素性がばれても困るので星羅は話をやめた。心配そうな表情で京湖がそっと星羅の肩に手を乗せる。
「かあさま。もう母は西国にいないようですね」
「そのようね」
「とにかく塩を買ったら帰りましょう」
目当てのものをすっかり買ってから帰宅する。待ちかねていたのか、ロバの明々は「ホヒイー」と嘶いている。
「こんなに香辛料が好きな漢民族もなかなかいないね」
白いターバンを頭に巻いた商人の男は白い歯を見せて笑う。
「ああ、昔、辺境で咖哩飯(カレーライス)を食べてからはまってしまって」
「そりゃあいい」
スパイスを麻袋に詰め終り、商人が星羅に手渡したとき「おや?」と一瞬手を止めた。
「ん? 何か? 金が足りないか?」
「いや、兄さんによく似た女の人を西国で見たことがあってね。まあでも漢民族はみな同じ顔だしなあ」
その話を聞いたとき、星羅も京湖も、胡晶鈴のことを話しているのだと思った。平静を装い星羅は尋ねる。
「僕によく似た女性かあ。その人はなぜ西国に? 今はどうしてるんだろうか?」
「さあー。なんでだろうなあ。だけどもう昔のことだけど、確か別の隊商ともっと西の浪漫国に行ったよ」
「浪漫国……」
「どうかしたかい?」
「あ、いや。えっと岩塩はどこだったかな?」
「塩なら、反対側に売ってるよ。まいどあり」
これ以上深く追及しても何もわからないだろうし、京湖の素性がばれても困るので星羅は話をやめた。心配そうな表情で京湖がそっと星羅の肩に手を乗せる。
「かあさま。もう母は西国にいないようですね」
「そのようね」
「とにかく塩を買ったら帰りましょう」
目当てのものをすっかり買ってから帰宅する。待ちかねていたのか、ロバの明々は「ホヒイー」と嘶いている。