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華夏の煌き~麗しき男装の乙女軍師~
第73章 73 婚礼
ぼんやり考えていると輿が止まり「花嫁の到着!」と大きな声と歓声が聞こえた。星羅は養父の彰浩に手を取ってもらい輿から降りる。頭からかぶっている赤い紅蓋頭のせいで、周囲はぼんやりとしか見えないが大勢の人が祝福してくれていることはわかる。
布の隙間からは、彰浩の浅黒い手が見える。実の父ではないと言え、彼は星羅を慈しんでくれた。じっと彼の手を見ていると、肌にはもう艶はなく目立たないがシミがあることに気づく。スキンシップの多い京湖と違い、彰浩とはそれほど抱き合ったことはないが、よく手を引いてもらったことを思い出す。浅黒い肌に薄桃色の長い爪甲。角ばった大きな手は優しい陶器を生み出し、小さな星羅の手を包み込んでくれた。
「とうさま……」
会えなくなるわけでないのに、星羅は寂しい気持ちでいっぱいになる。星羅のつぶやきが聞こえたのか彰浩もぽつりとつぶやいた。
「もう家に帰ってもいないのだな……」
今まで聞いたことのない寂しそうで弱気な声を星羅は聞いた。思わず歩みを止めて、強く彰浩の手を握った。
「もっともっと幸せに……」
わずかに力がこもった後、ふっと彰浩は力を抜き、すうっと星羅の手を上げる。星羅の指先にふわっと触れる別の人物の指先を感じた。
「大事にします」
明樹だった。彰浩の手は離され、星羅の手は明樹の手の上に乗せられる。その手は大きく温かかった。
「よろしくお願いいたします」
そう言って彰浩は後ろに下がる。思わず振り向きそうになった星羅の身体を、明樹がしっかりと支え「行こう」と歩き出す。
布の隙間からは、彰浩の浅黒い手が見える。実の父ではないと言え、彼は星羅を慈しんでくれた。じっと彼の手を見ていると、肌にはもう艶はなく目立たないがシミがあることに気づく。スキンシップの多い京湖と違い、彰浩とはそれほど抱き合ったことはないが、よく手を引いてもらったことを思い出す。浅黒い肌に薄桃色の長い爪甲。角ばった大きな手は優しい陶器を生み出し、小さな星羅の手を包み込んでくれた。
「とうさま……」
会えなくなるわけでないのに、星羅は寂しい気持ちでいっぱいになる。星羅のつぶやきが聞こえたのか彰浩もぽつりとつぶやいた。
「もう家に帰ってもいないのだな……」
今まで聞いたことのない寂しそうで弱気な声を星羅は聞いた。思わず歩みを止めて、強く彰浩の手を握った。
「もっともっと幸せに……」
わずかに力がこもった後、ふっと彰浩は力を抜き、すうっと星羅の手を上げる。星羅の指先にふわっと触れる別の人物の指先を感じた。
「大事にします」
明樹だった。彰浩の手は離され、星羅の手は明樹の手の上に乗せられる。その手は大きく温かかった。
「よろしくお願いいたします」
そう言って彰浩は後ろに下がる。思わず振り向きそうになった星羅の身体を、明樹がしっかりと支え「行こう」と歩き出す。