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華夏の煌き~麗しき男装の乙女軍師~
第10章 10 婚礼
 慶明には目標がある。流行り病で子供たち、つまり慶明の兄妹を次々と亡くし心を病んでしまった母を救うことだった。一時的に感情を回復させることもできたが持続はしなかったし、子を亡くしたことだけを忘れさせることも難しかった。枕のような布切れの塊をいつも二つ抱いて歌を歌っている。父はそんな母を疎ましく思い、家に寄りつかない。

 母を回復させるには、知識とともに経済力と地位が必要になってくる。金があれば貴重な薬草を調合することもでき、地位のおかげで遠方の珍しい素材を手に入れることができるのだ。母に効果的な薬ができれば、早馬を飛ばし飲ませに行っている。

 前回は貴重な龍の髭と、人の形をした西方の薬草、万土等胡等というものを組み合わせ煎じて飲ませた。効果は高く、うつろな目に光が戻り、子を亡くしたことと、慶明を認識した。母は慶明の医局での様子を聞きたがり、話すと顔をほころばせ「出世したのね」と慶明の頬を撫でた。
10年ぶりとも思える母との触れ合いはとても嬉しいものだった。もう青年であったがその日は母に甘えに甘え、一緒に眠ったが朝になると、また母は布切れの塊を二つ抱いていた。

 母のことは晶鈴にも話していない。晶鈴が両親を亡くし、母親の兄夫婦に大勢の子供たちと雑多に育ったことは知っている。そのことに比べれば、心の壊れた母でもいる自分はまだ良いのだろうかと思う。晶鈴と自分は孤独を知っているが違うものなのだろうか。
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