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華夏の煌き~麗しき男装の乙女軍師~
第98章 98 王太子候補
「この国難の状況下において、星羅に休養をとらせられないのが気の毒だな」
「ええ……。ただ休めても星羅は休もうとしますまい」
「徳樹の様子はいかがか?」
「母親を煩わせることなく軍師省で大人しくしています」
「軍師省におるのか」
「ええ。なぜか徳樹は軍師省に行きたがるのです。妻と乳母が面倒をみようとするのですが」
徳樹は母親から離れたくないと思って側にいるふうではなかった。まだ幼い彼は、軍師省で議論や策が練られているそばでじっと話を聞き、うとうと眠り、腹が減った時だけ星羅を呼ぶ。殺伐とした軍師省で徳樹は軍師たちに安らぎを与える存在のようであった。
「まこと、天子というものは徳樹殿のようですわね。陛下によく似ておいでで」
王妃の桃華が優しく隆明に話しかける。
「天子、か」
「あの、陛下。徳樹殿を王太子としてお迎えできませぬか? 杏華公主の子として」
「ふ、む」
桃華の提案に、脈診を行っている慶明の脈が速くなってきた。慶明は桃華と同様に、ずっと以前から自分の孫を王太子にとひっそり望んでいたのだ。
「できませぬか?」
「できぬこともない。しかし色々手筈を整えねばならぬ。本来なら生まれるはずのない子なのでな……」
陰りのある隆明の表情を見て、桃華も苦しくなる。
「わたしのせいで……」
「そなたに罪はない」
慶明は、桃華が男児を産めなかったことを苦しんでいるのだと思っていたが、桃華は自分が選ばれていない妃であることを話していた。冷宮に送られた姉が王家に嫁いでいればきっと男児が生まれただろうと思っている。
「ええ……。ただ休めても星羅は休もうとしますまい」
「徳樹の様子はいかがか?」
「母親を煩わせることなく軍師省で大人しくしています」
「軍師省におるのか」
「ええ。なぜか徳樹は軍師省に行きたがるのです。妻と乳母が面倒をみようとするのですが」
徳樹は母親から離れたくないと思って側にいるふうではなかった。まだ幼い彼は、軍師省で議論や策が練られているそばでじっと話を聞き、うとうと眠り、腹が減った時だけ星羅を呼ぶ。殺伐とした軍師省で徳樹は軍師たちに安らぎを与える存在のようであった。
「まこと、天子というものは徳樹殿のようですわね。陛下によく似ておいでで」
王妃の桃華が優しく隆明に話しかける。
「天子、か」
「あの、陛下。徳樹殿を王太子としてお迎えできませぬか? 杏華公主の子として」
「ふ、む」
桃華の提案に、脈診を行っている慶明の脈が速くなってきた。慶明は桃華と同様に、ずっと以前から自分の孫を王太子にとひっそり望んでいたのだ。
「できませぬか?」
「できぬこともない。しかし色々手筈を整えねばならぬ。本来なら生まれるはずのない子なのでな……」
陰りのある隆明の表情を見て、桃華も苦しくなる。
「わたしのせいで……」
「そなたに罪はない」
慶明は、桃華が男児を産めなかったことを苦しんでいるのだと思っていたが、桃華は自分が選ばれていない妃であることを話していた。冷宮に送られた姉が王家に嫁いでいればきっと男児が生まれただろうと思っている。