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華夏の煌き~麗しき男装の乙女軍師~
第12章 12 失われた能力
 いつもより早く目が覚めた晶鈴は、暗闇の中、物音を立てないように起きだして小屋を出た。

「月がきれいね」

 13夜の月がまだ夜の空の支配者だった。月を眺めていると茂みが鳴る。隆明が来たのだろうと振り向いた。

「今日は早いのね」
「晶妹も」

 月光に照らされた隆明の肌は青白く、漆黒の髪は夜の中に溶け込むかのような、この世のものと思えない美しさだった。あまりの美しさに晶鈴は少し薄ら寒い気がした。
 すっと距離を縮めて寄ってくる隆明に思わず「なんだか今日の兄さまは怖いわ」とつぶやく。

「晶妹……」

 無言で見つめてくる隆明の目を直視できず、目をそらしてしまう。その晶鈴の頬をそっとなで、あごまでなぞり上を向かせる。

「兄さま?」
「許してほしい……」

 そっと隆明は晶鈴に口づけする。いきなりの口づけに晶鈴は目を丸くするが、握られた手首に強い力を感じてすっと目を閉じた。優しく唇を吸われ、舐められ、温かい舌先が潜り込んでくる。口の中を味わうようにゆるゆると舌を這わされ、晶鈴も同じように舌を絡め合わせる。
 柔らかく短い草がはえた上に隆明は萌黄色の上着を広げ、その上に晶鈴を横たわらせた。

 晶鈴は怖いくらいの真顔の隆明に不安な表情をみせる。これから何が起きるのか、彼が何をしようとしているのかはもう知ってる。知っているが、具体的にどうなるのかはわからない。

「優しくするから」

 言葉ではそういわれても、安心感は得られなかった。ただ辛そうな隆明を、彼のしたいことを晶鈴は受け止めるだけだった。月明かりの下、晶鈴の着物のまえが開かれる。
 隆明も着物のまえを開き肌をさらす。初めて見る青年の身体だった。同じ背格好だった二人の体格は全く違うものになっている。肩は広く、胸も腹部もかたく引き締まっている。やわらかい晶鈴の肉体とは対照的だった。
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