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華夏の煌き~麗しき男装の乙女軍師~
第109章 109 旅立ち
「あの、王には、父には会わなくて良いのですか?」

 西国で朱京湖とは会ったようだが、華夏国ではなんとか星羅と会っただけだ。

「会わないわ。今の彼はもう後ろを振り向くことがないでしょう。会う必要がないの」
「そう、ですか」
「そうだ。会わねばならぬものがあったわ」
「誰です?」
「行きましょう。あなたがいないと会えないわ」

 晶鈴は思い立ったように立ち上がり、星羅を外に連れ出す。馬の優々がつながれているところへ行き「さあこの子も一緒に」と優々の背を撫でた。

「一体どこへ?」
「あなたの屋敷を思ってちょうだい」
「ええ」

 言われるまま、目を閉じ屋敷を思う。目を開くと、目の前に小さな屋敷にたどり着いた。今まで晶鈴の話を聞いていたが、実際信じろというのは難しいと感じていた。しかし、今、一瞬で自分の屋敷に戻ったのだ。

「明々のとこへ案内して」

 厩舎にいくとロバの明々がぼんやりと虚ろな様子で横たわっている。晶鈴が「明々」と声を掛けると「ひん?」と弱々しく啼いてきょろきょろする。

 明々のそばに行き、晶鈴は長い鼻面を優しく撫でる。明々はその晶鈴の手をなめようと長い舌を出してあちこち舐めまわそうとしている。

「ただいま」
「ひ、んっ」
「長い間、星羅の面倒を見てくれてありがとう」
「ひひっ」
「ほら、これはあなたに」

 懐から桃色の岩塩をとりだし明々に見せる。明々は2、3度ぺろぺろ舐めて満足したような表情を見せた。そしてうとうとと眠りについた。
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