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華夏の煌き~麗しき男装の乙女軍師~
第110章 110 京樹の帰国
 西国から京樹のために正式な迎えがやってくる。西国の老臣の宰相と外交官は何十年かぶりの国賓であるが、飢饉を何とか乗り越えた華夏国にとって十分なもてなしは不可能だった。せいぜい地方の富豪の結婚式だ。大臣たちは恥ずかしさのあまり俯いている。

「申し訳ない。せっかくお越しいただいたのに満足にもてなすことが出来ぬ」

 王の曹隆明の言葉に老臣は手を大きく振り額づく。

「王様、とんでもございません。このような立派なもてなし痛み入ります。西国とて同様です。飢饉でもないのに民は飢え……」

 暗殺された王のバダサンプは市民から搾れるだけの税を搾り取っていた。国のことなどまるで考えず、おのれの欲望だけを満たし続け、忠言を進言する大臣たちを抹殺してきた。
王位継承者もことごとく亡き者にされた。暗殺されなければ西国はバダサンプとともに消滅していき、隣国の領地になっていてもおかしくなかった。

「新しい王はきっと善政を布いてくれると思います」

 そこへ西国の正装をした京樹がやってきた。スカイブルーの何層もあるドレープの軽やかな衣装は、金糸銀糸で刺繍がほどこされきらきら輝いている。普段から着慣れていた漢服よりも、やはり西国の衣装が良く似合う。彩度の高い青は京樹の聡明さを引き立たせ、ナイーブに見えた彼を逞しく感じさせる。

 国賓を迎えるこの祝宴に、軍師として、また京樹の妹として星羅も末席を与えられている。初めて見る西国の正装をした京樹は華やかで素晴らしく美丈夫で、思わず見とれてしまった。

「京にいじゃないみたい」

 西国の花と呼ばれた母、ラージハニを持つエキゾチックな西国の新王『ラカディラージャ』は、これから国民をその容姿だけでも魅了していくだろう。
曹隆明に堂々と挨拶をしたのち、上座に座った京樹が、星羅を見つけ笑んだ時、初めて胸がドキリとした。
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