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華夏の煌き~麗しき男装の乙女軍師~
第19章 19 空っぽの小屋
「あっ……」
隆明の目に映ったのは、薬師の陸慶明だった。彼は深刻そうな、また哀れんだような眼を向けてくる。
「隆明様……」
「……」
「晶鈴はもうおりませぬ……」
「え? どういうことだ。なぜだ」
美しく白い隆明の顔が苦痛に歪む。見るのがいたわしいと思いながら慶明が答える。
「実は……」
彼女が占術の能力をなくしたがために、太極府から出ていくこととなり故郷に帰った話をした。
「どうして……」
絶句している隆明に、彼女が子を宿していることは話さなかった。
「そうか……」
身体から力が抜け、心から喜びが消えてしまった隆明は力なく笑った。
「晶鈴に何もやったことがなかったな……」
いまさらながらに、何も贈り物をしたことがなかったことに気づいた。慶明は悲痛な言葉を聞きながらも、隆明は彼女に子を授けたのだと心の中でつぶやく。隆明の姿を見ると、兄妹をなくして心を壊した母を思い出してしまった。
「隆明さまは、そんなに晶鈴を……」
「そうだな。失って初めて気づくものなのだな」
「……」
「他言無用で頼む」
「承知しています」
日の光でお互いの顔がはっきり見える前に2人は小屋から立ち去った。去り際、隆明の頬の涙が朝日に光っているのが見えた。
隆明の目に映ったのは、薬師の陸慶明だった。彼は深刻そうな、また哀れんだような眼を向けてくる。
「隆明様……」
「……」
「晶鈴はもうおりませぬ……」
「え? どういうことだ。なぜだ」
美しく白い隆明の顔が苦痛に歪む。見るのがいたわしいと思いながら慶明が答える。
「実は……」
彼女が占術の能力をなくしたがために、太極府から出ていくこととなり故郷に帰った話をした。
「どうして……」
絶句している隆明に、彼女が子を宿していることは話さなかった。
「そうか……」
身体から力が抜け、心から喜びが消えてしまった隆明は力なく笑った。
「晶鈴に何もやったことがなかったな……」
いまさらながらに、何も贈り物をしたことがなかったことに気づいた。慶明は悲痛な言葉を聞きながらも、隆明は彼女に子を授けたのだと心の中でつぶやく。隆明の姿を見ると、兄妹をなくして心を壊した母を思い出してしまった。
「隆明さまは、そんなに晶鈴を……」
「そうだな。失って初めて気づくものなのだな」
「……」
「他言無用で頼む」
「承知しています」
日の光でお互いの顔がはっきり見える前に2人は小屋から立ち去った。去り際、隆明の頬の涙が朝日に光っているのが見えた。