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M嬢のいる風景
第8章 佇む女【みつるのこと】
 みつるが彼(=ご主人様)に呼び出される時は、いつも雨が降っている。

 みつるは着衣のまま後ろ手に縛られ、テラスに出され、延々と立たされ続ける。
 雨の中、ぐっしょりに濡れるにまかせて、立たされ続ける。

 彼は、みつるの事など気に掛ける様子もなく、部屋の中で過ごす。本を読んだり、他の女を責めたり、時には食事しながら談笑したり。

 その様子は、みつるからはよく見える。みつるは、じっと、彼の様子を見ている。

 一時間が経っても、二時間が経っても、彼はみつるの方を振り向かない。

 みつるの身体は雨に体温を奪われ、唇は紫がかり、全身で震え出す。大体は失禁して、太ももを伝って黄色い液体が床をぬらす。それどころか、緩んだ塊まで漏らしてショーツの中を重くすることも度々である。

 そうなっても、みつるは必死に立ち続けている。

 やがて、みつるの体力が限界を超えたかという頃合に、彼はテラスへと降り立つ。
 雨の中、みつるに近付き、静かに抱き寄せる。
 黙ったまま、抱き寄せる。

 彼の体温を感じて、みつるは崩れ落ちそうになる。

 彼は、みつるを支え、抱きかかえると、浴室へ連れて行く。
 彼自身の手で、ゆっくりと、やさしく、みつるの身体を洗い、湯船に浸してあげる。

 みつるは、浴槽の中で静かに寝息を立てる。
 彼は、みつるを眺めつつ、髪をなで続ける。
 みつるとのSMは、いつもこれだけである。
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