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女子大生綾子の淫らなポテンシャル
第56章 嵌められた主艶女優




その一年前のミドリもまた、
健一の闇のシナリオの餌食となって
「主艶女優」とさせられていく
「艶技指導」が始まった。


その夜のミドリは、
役と日常を切り離したいと、
公演終了後に着替え、
女子大生に完全に戻っていた。
特に初日は晴れやかな気持ちに
なれる服を選んでいた。


ただ、稽古着でも役衣装でもない姿で
健一に演技指導を受けたことはなかったから、
そこにはミドリの中で違和感があった。
女子大生から役者にまた切り替えるのは
気持ちの持っていき方が難しい。


「おっ、ミドリ、一周回ったら、
顔つきが女優になったな、
すげ〜な、それ。
ミドリも上手くなったってことだな」


上手くなったと言われて嬉しくないわけがない。
無意識のうちに出来るようになっていたのかもしれない。
アイマスクをつけているのに
表情の変化までわかっちゃうなんて。
健一もすごいな。
何も疑うこともなく、そう感心していた。
実際は、健一がテキトーに
言っているにすぎないことだった。


「よし、じゃあ、はじめるか。
ここは舞台の上だから、満員の観客全員が
スポットライトを当てられている
ミドリだけを見ているんだ。


その一つ一つの視線を感じるんだぞ、
主艶女優は、それを受け止める
責任があるんだからな。


みんな、ミドリの艶技、見に来てるんだ。
一人一人を見つめて、お前の虜にするんだ。
それができちゃうのが、
ミドリの素晴らしいところだ」


役者冥利につきる。
健一の言葉の一つ一つが響き、
ミドリを舞い上がらせた。
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