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女子大生綾子の淫らなポテンシャル
第57章 闇のシナリオ・凶犯者
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健一の撮る映像は、
フランス映画のように詩的だった。
街の人々の表情を生き生きと
情感たっぷりに切りとり、
でもどことなく
アンニュイな憂いに纏われている。


放送研究部の勉強会で
健一の短編作品を見たことがあるけれど、
ドキュメントタッチでありながらも
幻想さもありミドリは好きだった。


そんな作品を撮る健一に、
稽古中に、思いついたことがあって、
撮りたくなったと言われたけれど、
まさか、自分が撮るられるとは思わなかった。


「ミドリちゃん見ていると、
物語が湧いてくるんだよね。
オレの女神(ミューズ)みたいだよ」


そんな歯の浮くような言葉も
健一から言われるとリアリティがあった。
女優冥利につきる。
ほとんど即興で作られていた。


「そのまま、振り向いて、カメラを見つめて。
もっと情感たっぷりに。
忘れたいのに、忘れられない。
かつて愛し合っていた彼を思い出して。


ああ、いいね〜、
悲しい気持ちを振り払うように、
最後は、自分を肯定するように、
ニコッとしてみて。


おおっ、最高だよ
ミドリちゃん、映像でも主演でやっていけそうだね〜」


レンズに捉えられるのは、
観客に見られるのとはまた違う
心地よさがあることにミドリも気づき始めていた。


舞台の上は、無数の手で撫でられる快感、
レンズの先では、心を射抜かれるような
エクスタシーにも似た感覚だった。


そんな気持ちが生まれ、
うっとりとレンズを見つめるミドリの表情を
健一は捉えていた。


「なあ、ケン、これもいいんだけどさ〜、
下着姿の後に、これ?
俺が見たいのは、こんなんじゃないんだけど」
「そぉ?相当エロいけどな、これ。
それにさ、この時からもう、
ヒロからもらった、例のアレ、
レモンスカッシュに溶かし込んであるから」
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