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第70章 エピローグ　クランク淫　主艶女優綾子

２



綾子から見ても、
カオルの演技は、十分すぎるほど
頑張っていたから、
健一からダメだしされるのは
意外だった。


ーーー初めて付き合った
恋人とうまくいかなくて、
ひとり旅をしていた女子大生が、
高原で道に迷っていたところ、
寂しげにしている青年に出会って、
やがて惹かれ合うーーー


簡単に言ってしまえば
そんなストーリーだけれど、
そこは健一の脚本で、
感情の微妙な揺れから
二人が、惹かれ合うところまで、
うまく描かれていた。


特に、女子大生が、
恋人への思いを引きずりながら
高原で出会った青年に
心惹かれていく様子は、
綾子には、今の、
自分のことのように感じられて、
感情移入してしまうほどだった。


実際に、それは、
綾子をイメージしながら
健一が書き下ろしたもので、
綾子がそう感じてしまうのも
当然だ。
もちろん、綾子がそのことを
知るわけもない。


「お前、
全然、分かってね〜な。
下手くそ」


このカオルへの健一の罵り言葉は、
綾子には意外に思えるほどに
厳しいものだった。


「オレの脚本、台無しに
すんなよ、カオル。
言葉がこもってねーんだよ。
この、素人がっ」


あまりの剣幕に、
イケメンくんも言葉を
挟めない状況だった。


素人も何も
わかっていて恋人のカオルちゃんを
抜擢したのは健一部長よね、、、
そんな言い方しなくても、、、


セリフだった完璧だし、
アタシだったら、
今の演技でも十分感動できるのにな、
どこがいけないんだろ。