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真紅の花嫁
第8章 紫苑の教師
(あのベッドや、こっちの椅子で)
〈調教〉と称する淫らな行為が行われていた現場にいることを実感し、脈拍が上昇する。
(それにしても――)
マンションの立地条件や建物の造りだけではない。
部屋の広さ、家具調度類に至るまで、未成年の独り暮らしにしては立派すぎる感じだ。
両親ともに亡くしているのが本当なら、現在の保護者がよほどの資産家なのだろうか。
美術館の休館日だった。
午前中、誰もいない事務室でアルバイトの身上書を確認し、亮の住むマンションにやってきた。
その時に、保護者の名前も見ている。
真波は、テーブルの向かいに座った眼鏡の女性に尋ねた。
「失礼ですが、望月《もちづき》紀美子《きみこ》さんでしょうか。
桐原くんの保護者の」
「保護者といえば、まあ、そうかもね。
亮のことで、何か?」
そう言われても、答えられるものを真波は持っていなかった。
居心地の悪さが倍加する。
「望月さんは、ここにお住まいじゃなくて……?」
「このマンションは、亮だけのもの。
わたしは時々来て、お掃除したり、洗濯したり……
体のいい家政婦というところかな」
自嘲の笑みを浮かべた。
紫苑色というのだろうか、淡い紫色のハイネックカットソーに、膝下丈のベージュのスカート。
シンプルな服装は知的なイメージに合っていたが、いずれも着古したものだ。あまり裕福な感じはしなかった。