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真紅の花嫁
第8章 紫苑の教師


「映像ファイル、見てくれた?」

そう言って、真波の表情をうかがう。
端正な甘いマスクは、無邪気な好奇心に満ちていた。


真波はちらっと、横に立ったままの女性に眼をやった。
人前でするような話題ではない。

まるで彼女がそこにいないかのように振る舞う亮に困惑した。


真波の視線を追って、亮が紀美子を見た。
まだいたのか、という感じだった。

紀美子はテーブルに置いてあったハンドバッグから、急いで白い封筒を取り出した。

「これ、今月分」

「ああ、ありがとう」

亮は封筒を受け取ったきり、もう女の方を向きもしない。
紀美子は何か言いたげに少年を見つめていたが、やがて、静かにため息をついて、

「じゃあ、帰るわね」


肩を落として、玄関わきのゴミの袋を持った。
ドアが閉まった。


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