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真紅の花嫁
第8章 紫苑の教師
深呼吸をして気を静める。
ここで感情的になったら、こちらの負けである。
気後れしそうになる気持ちを懸命に鼓舞し、亮の顔をきちんと見据えた。
「データを処分して。
姫川さんの分も全部」
「綾音とは了解済みだよ。
恋人同士の秘かな愉しみ。他人が口を出すようなことじゃないよね」
真波はバッグから封筒を取り出し、テーブルに置いた。
「これでお願い。
わたしには、これが精一杯よ」
中には銀行で降ろしたばかりの現金が入っていた。
両親に気づかれずに自由になる金を、すべてかき集めた。
組織犯罪でははした金だろうが、高校生ならかなりの大金のはずだ。
だが、亮は封筒の中身を確かめようともしなかった。
真波に憐みと軽蔑の入り混じった視線を向けてくる。
「がっかりだなあ。
真波さんがこんなことをするなんて」