この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
真紅の花嫁
第9章 蘇芳の埋火
「こちら、三輪さん。ぼくがお世話になってる人」
そう亮が紹介しても、俯いたまま何も言わない。
床に視線を泳がせるだけだった。
「三輪さんは、ええと、インストラクターでしたっけ?」
「ああ。駅前のフィットネスクラブで水泳担当。
相手にしてるのはオバハンばっかりだけどな」
「綾音、挨拶は?」
「よ、よろしく」
ちらっと男を見上げ、小さく頭を下げた。
上品なデザインのシフォンブラウスに、ピンクベージュのミニ丈のスカート。
清潔感にあふれた服装だが、愛らしい美貌に笑顔は見られず、緊張に強張っているのが痛々しかった。
「こちらこそ」
三輪と呼ばれた若者は片頬を上げて、綾音の横にどさっと乱暴に座った。
重みで、ソファが沈んだ。
「綾音ちゃんていうんだ」
馴れ馴れしい口調に、綾音はビクンと身をすくませる。
この場から逃げ出したいのに逃げ出せない。
そんな気持ちがありありしていた。