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真紅の花嫁
第9章 蘇芳の埋火


「こちら、三輪さん。ぼくがお世話になってる人」

そう亮が紹介しても、俯いたまま何も言わない。
床に視線を泳がせるだけだった。


「三輪さんは、ええと、インストラクターでしたっけ?」

「ああ。駅前のフィットネスクラブで水泳担当。
   相手にしてるのはオバハンばっかりだけどな」

「綾音、挨拶は?」

「よ、よろしく」

ちらっと男を見上げ、小さく頭を下げた。


上品なデザインのシフォンブラウスに、ピンクベージュのミニ丈のスカート。

清潔感にあふれた服装だが、愛らしい美貌に笑顔は見られず、緊張に強張っているのが痛々しかった。


「こちらこそ」

三輪と呼ばれた若者は片頬を上げて、綾音の横にどさっと乱暴に座った。
重みで、ソファが沈んだ。

「綾音ちゃんていうんだ」

馴れ馴れしい口調に、綾音はビクンと身をすくませる。

この場から逃げ出したいのに逃げ出せない。
そんな気持ちがありありしていた。



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