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真紅の花嫁
第9章 蘇芳の埋火
三輪は亮を一瞥した。
本当にいいんだな、と眼で念を押す。
亮が顎を引くと、綾音の肩に手を掛け、ぐいと抱き寄せた。
一瞬、嫌がる素振りを見せた綾音だが、気弱な視線を少年に向けて、おとなしく男の胸に抱かれた。
三輪が唇を尖らせて、顔を近づけてくる。
女は眉を顰めて顔を背けた。
「綾音。キスしてやりな」
亮の声は高圧的だった。
綾音はおずおずとうなづき、男と唇を重ねた。
ふたつの唇が、くなくなとこすれ合うのを、亮は黙って見つめる。
男が舌を入れようとするのを、綾音は眼をぎゅっと閉じて、懸命に拒絶していた。
(なんなの、これ)
真波はクローゼットの中で息を呑む。
ルーバーの隙間の外に展開するのは、理解に苦しむシチュエーションだ。
声を殺すのがやっとだった。
少年がこちらを見て、ニヤリと笑った。
綾音も青年も気づいていない。
真波だけに向けられたメッセージは、自慢だろうか。愚弄だろうか。