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真紅の花嫁
第2章 濃藍のフィアンセ
もう一口、ワインを飲む。
仕事の疲れが、じんわりと抜けていく。
「忙しいみたいだね」
「ごめんなさい。
いろんな作業が重なって、今が追い込みの時なの」
「ぼくこそ、無理をいってごめん。
でも、うれしい」
武藤陽介はまっすぐな視線を真波に向けて微笑む。
クロスがけのテーブルの上で炎のようにゆらめく灯りに、精悍な瞳がきらきらと輝いた。
肩幅の広い長身に、洒落たデザインのオーダースーツをまとい、すっと伸ばした背筋も凛々しい。
男らしくがっちりした体格にもかかわらず、身のこなしは優雅で品がある。
かといって、お高くとまっているわけでも、堅苦しいわけでもない。
白い歯を見せて屈託なく笑う姿は、男の子のように無邪気で可愛かった。
真波の方はダークカラーのハイネックブラウスに、タイトフィットな濃紺のパンツスーツだ。
昼間来ていたラフな服装を、ギャラリートーク用に置いていたフォーマルなスーツに着替えてきてよかった。